Concept


パワースポットみたいになるデザインがええ、そんなふうがええ。

 

 某デザイン会社に席を置き、主に大手地方銀行の広告企画を立案、ツールの制作に従事したのが1990年代。それなりにいい仕事ができたと自負はしていましたが、常に何か釈然としないものがありました。大きな組織を持つ企業との仕事は、時としてエンドユーザーであるお客様の顔が見えなくなり、声を聞き逃すこともしばしば。依頼人の思いを正確に受け止め、ツールに落し込み発信したものが真のお客様の心に届く、こんなごくごく普通のヴィジョンを抱いて独立、Hoo「ふぅー」として2005年にスタートしました。

 

 幸いにもHooは、店舗のオーナーや、組織は小さいかもしれないけれど素晴らしい技術と情熱を持つ、企業のトップの方々と、直接仕事に取り組む機会を多くいただいております。現場の生の声を聞き、問題を共有し、真のお客様の顔を見つける。何のための?誰のためのデザイン、そもそも本当に必要なの?そのデザインというやり取りを通して、共に問題解決を模索する。そして出来た○○のデザイン、お役に立ちました? 何の、誰の役に立ちました? なかなか難しい事ですね(笑)、当り前の事を大切にしたいと日々奮闘しています。

 

 そんな中、ある女性花人から自費で作品集を出版したいという依頼を受けました。私、カメラマン、先生と、たった3人の個人プロジェクトがスタートして2年後の昨年秋、作品集は出版されました。通常とは少し違うスタンスで進んだこの仕事を通して、大きな感謝とたくさんの笑顔をいただきました。デザインという仕事に関わって約30年、大震災の昨年、デザイナーに何が出来るのと考える中、いただけた小さくて大きな喜びの仕事でした。

 

 歌手が歌の力と言うように、パワースポットみたいになるデザインを出力し、そんなふうなデザインから、逆におかげをいただく。デザインの力を、人のために生かす事を今一度考えながら取組んで行きたいと思っています。

 

2012年3月

DESIGN LINK OSAKA vol.55

(財団法人大阪デザインセンター発行)

執筆原稿より